アミノ酸・タンパク質 基礎知識
amino acid
アミノ酸スコアとは?計算式やスコア100の食品、プロテインスコアとの違いを解説
2021年9月28日 - 更新日: 2023年2月12日
「タンパク質を摂取した方が良いと言われたけど、なにを食べればいいの?」
「バランスのいい食事を意識してくださいって言われたけど、バランスがいい食事って何?」
私たちが普段意識せずに摂取しているタンパク質。
実はタンパク質にも良質なものとそうでないものがあります。
この記事では、良質なタンパク質を見分ける方法の一つである、アミノ酸スコアについて解説します。
また、完璧なバランスがとれていると言われるアミノ酸スコア100の食品や、旧式の判定方法であるプロテインスコアとの違いもわかりやすく解説します。
アミノ酸スコアについて知ることで、あなたの健康を守りましょう。
アミノ酸についての解説は、こちらの記事を参考にしてください。
アミノ酸とは?タンパク質との違いや種類・効果を簡単に解説
アミノ酸スコアを知ることで健康を守ろう
良質なタンパク質を見分ける指標として使われるアミノ酸スコア、そしての計算に使う第1制限アミノ酸、アミノ酸評点パターンについてお伝えします。
アミノ酸スコアの計算式とは
アミノ酸スコアは食品にバランスよくアミノ酸が含まれているかどうかを表す指標です。
バランスが良い食品は最大100の高スコア、バランスが悪い食品は低スコアとなります。
必須アミノ酸のアミノ酸スコアに関して、以下の式で計算をします。
アミノ酸スコア = 食品たんぱく質中のアミノ酸含有量(mg/gタンパク質) / アミノ酸評点パターンの当該アミノ酸量(mg/gタンパク質)×100
分母となるアミノ酸評点パターン、分子となる第一制限アミノ酸含有量について、これから解説します。
アミノ酸ごとの基準値であるアミノ酸評点パターン(最新版)
アミノ酸スコアは、アミノ酸評点パターンと呼ばれる基準値を基に計算されています。
最新のアミノ酸評点パターンは以下の通りです(18歳以上の場合)
合計 | 277 |
アミノ酸 | アミノ酸表点(mg/gタンパク質) |
ヒスチジン | 15 |
イソロイシン | 30 |
ロイシン | 59 |
リジン | 45 |
メチオニン(合計含硫アミノ酸) | 22 |
フェニルアラニン(合計芳香族アミノ酸) | 38 |
トレオニン | 23 |
トリプトファン | 6 |
バリン | 39 |
この基準値はFAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、UNU(国連大学)で定められており、最新の基準値は2007年に発表された数値になっています。
第1制限アミノ酸とは含有割合が最も少ないアミノ酸
第1制限アミノ酸とは、アミノ酸スコアを計算したときに最も少なくなった値のアミノ酸のことを指します。
なぜアミノ酸スコアの数値だけでなく、第1制限アミノ酸も記載するかというと、タンパク質の合成にはすべてのアミノ酸がバランスよく存在する必要があるからです。
一部のアミノ酸が不足してしまっていると、タンパク質を合成できる量が減ってしまいます。
9つの必須アミノ酸の中で、最も少なかった値をアミノ酸スコアとします。
つまり、どの項目においても100を超える場合のアミノ酸スコアは100です。
9つの項目で8つのアミノ酸スコアが100でも、1つのみ50であれば、その食品のアミノ酸スコアは50となります。
なお、アミノ酸スコアを表記する際は最も低かったスコアのアミノ酸とともに「Lys49(リジン49)」などと表記されることがあります。
アミノ酸スコア100の食品
具体的にアミノ酸スコアが高い(アミノ酸スコア100)の食品は以下の通りです。[3]
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
鶏卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
鶏肉 | 100 |
いわし | 100 |
まぐろ | 100 |
豚肉 | 100 |
牛肉 | 100 |
大豆 | 100 |
上記のように、アミノ酸スコア100の食品は多くあります。
他にも豚肉や牛肉、大豆などもアミノ酸スコアは100です。タンパク質を多く含む食品は、アミノ酸スコアが高い傾向にあります。
一方で、お米、パンなどはアミノ酸スコアが低い傾向です。[3]
食品 | アミノ酸スコア | 第一制限アミノ酸 |
---|---|---|
精白米 | 93 | リジン |
パン | 51 | リジン |
とうもろこし | 44 | リジン |
たまねぎ | 66 | ロイシン |
もやし | 77 | 合計含硫アミノ酸 (メチオニン+シスチン) |
朝、パンやお米だけを食べている方は、他の副菜もあわせて摂取できるように心がけていきましょう。
プロテインスコアとアミノ酸スコアの違い
プロテインスコアとは、アミノ酸スコアよりも昔に提唱されたスコアです。
どちらも食品に含まれるアミノ酸に関しての指標で、基準値に対しての割合で計算しますが、プロテインスコアとアミノ酸スコアでは算出に使う基準値が違います。
旧式のプロテインスコアには、比較タンパク質(食品蛋白質の窒素1gあたりの必須アミノ酸)が計算に使用されていましたが、新しいアミノ酸スコアではアミノ酸パターンが使用されています。
1955年にFAOによって提唱されましたが、1973年に基準となる必須アミノ酸も変化し、名称もアミノ酸スコアへ変わりました。
アミノ酸スコアの基準が変化したことで正確に必須アミノ酸の基準値を測定できるようになり、スコアが変化しています。
現在ではプロテインスコアは使用されていませんので、アミノ酸スコアを使用しましょう。
アミノ酸スコアに関するよくある間違い
アミノ酸スコアに関してよくある2つの間違いを説明します。
①アミノ酸スコアが低い食品は食べない方がよい
よくある間違いのひとつとして、アミノ酸スコアが低い食品は食べない方がよいと考える人がいます。しかし、アミノ酸スコアが高い食品と組み合わせれば、アミノ酸スコアが低い食品を食べても問題ありません。アミノ酸スコア100の食品は、基準値よりも多くの必須アミノ酸を含んでいるため、補うことが可能です。
また、白米などは糖質なども多く含んでおり、これらは重要なエネルギー源となります。もちろん、白米だけ、パンだけなどの食事ではアミノ酸摂取量は足りません。他の食材をうまく組み合わせながら、自分の食事を見直していきましょう。白米だけの方は卵や納豆を加えるなどしてみましょう。
②アミノ酸スコアが100であれば気にしなくていい
アミノ酸スコア100の食品があれば、他の食品のことは気にしなくていい。これも多い間違いのひとつです。アミノ酸スコアは、食品中のアミノ酸が含まれている量を化学的に分析し計算されたものとなります。しかし私たちが食事を摂る際には、タンパク質の消化吸収率や加熱、アルカリ処理などによるアミノ酸の有効性が変化することに注意しなければいけません。
つまり、アミノ酸スコア100の食品でも調理方法やそもそもの消化吸収の段階で低下することが起こりうるということです。このようなことも含めると、さまざまな食品をバランスよく摂取していくことが望ましいといえるでしょう。
アミノ酸スコア最新の評価基準DIAAS
消化吸収などを踏まえたアミノ酸スコアで最新の評価基準としてDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)があります。DIAASは、小腸でのアミノ酸消化率を測定することで、体内に吸収されたアミノ酸の量や、アミノ酸・窒素要求量に対するタンパク質がどのくらい寄与するかを正確に測定することができるスコア方法です。
しかし人に対しての試験が困難であるため、現在データベースの作成を行っている最中であり、日本の食品標準成分表では従来通りアミノ酸スコアが用いられています。
アミノ酸スコアだけでなくタンパク質の量に注意!
いくら質をよくしても、絶対量が不足してしまうと合成できるタンパク質が不足します。
多くの方は、朝食でタンパク質が不足する傾向にあるので、しっかり量も摂るようにしましょう。
タンパク質の摂取量が不足すると起こりうる病気
タンパク質の摂取不足で起こりうる疾患にフレイル、サルコペニアという病気があります。筋肉量が減少し、転倒などを起こしやすくなる病気です。予防のために、高齢者では少なくとも1.0g/kg体重/日以上のタンパク質の摂取が望ましいと考えられています。また、ヨーロッパやアメリカでは、健康な高齢者にはタンパク質摂取量は1.0-1.5g/kg体重/日が勧められています。
慢性腎臓病の方はタンパク質過剰摂取に要注意
一方で、慢性腎臓病の人はタンパク質の摂取量を制限する必要がある場合もあります。2018年に発表された論文では、0.8g/kg体重/日を基準に低タンパク質食の方が高タンパク質食よりも末期腎不全に進んでしまう方が少なかったと報告されています[1]。
慢性腎臓病の方は、タンパク質を摂る際には、主治医の先生と相談しましょう。
アミノ酸スコアのまとめ、活用アドバイス
今回はアミノ酸スコアについて解説しました。
アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸がどの程度バランスよく含まれているかを示す値であり、高いほどバランスが良いといえます。そしてアミノ酸スコアが100になっている食品は卵や肉類などで、タンパク質が豊富に含まれていると言えます。一方で、精白米やパンなどは低いスコアとなっています。
アミノ酸スコアが高い食品に偏りすぎないようにしたり、アミノ酸スコアが低い食品でも高い食品と組み合わせることが重要です。
アミノ酸スコアを活用するポイントは以下です。
- 自分の食事がアミノ酸スコアの低い食品ばかりになっていないかチェック
- アミノ酸スコアの高い食品やサプリメントと組み合わせて摂取することも可能
- 外食でもアミノ酸スコアの低い食品が多い場合には、積極的にサプリメントの摂取を行う
私たちの体を構成するアミノ酸。ぜひ意識して将来の健康を守っていきましょう。
【引用文献】
【参考文献】
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