
アミノ酸・タンパク質 基礎知識
amino acid
アミノ酸スコアとは?アミノ酸スコアに関してよくある間違いも解説
2021年9月28日 - 更新日: 2021年10月4日
「タンパク質を摂取した方が良いと言われたけど、なにを食べればいいの?」
「バランスのいい食事を意識してくださいって言われたけど、バランスがいい食事って何?」
私たちが普段意識せずに摂取しているタンパク質。実はタンパク質にも良質なものとそうでないものがあります。
「そんな違いあるの?」と思われた方も多いかと思いますが、タンパク質はアミノ酸から構成されており、その組み合わせによって質が違ってくるのです。
この記事では、良質なタンパク質を見分ける方法の一つである、アミノ酸スコアについて解説します。
どの食品のタンパク質が良いのか、なぜタンパク質の摂取が大切とされるのかなど、基本的な部分も説明します。
アミノ酸スコアについて知ることで、あなたの健康を守りましょう。
アミノ酸スコアを知ることで健康を守ろう
アミノ酸スコアはあまりなじみのある言葉ではないかもしれません。この章では、アミノ酸スコア、第1制限アミノ酸、アミノ酸が大切な理由を説明します。
アミノ酸スコアとは
アミノ酸スコアについて簡単に説明すると、アミノ酸スコアは食品にバランスよくアミノ酸が含まれているかどうかを表す指標です。バランスがよければその食品は最大100の高スコア、バランスが悪い食品は低スコアとなるという考え方になります。
さらに詳しく説明すると、アミノ酸スコアとは食品中のアミノ酸組成を基準値(アミノ酸評点パターン)と比べてどのくらい含まれているかを示した数値です。この基準値はFAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、UNU(国連大学)で定められており、最新の基準値は2007年に発表された数値になっています。
調べる項目は、以下の9項目です。
- ヒスチジン
- イソロイシン
- ロイシン
- リジン
- メチオニン(合計含硫アミノ酸)
- フェニルアラニン(合計芳香族アミノ酸)
- トレオニン
- トリプトファン
- バリン
9つのアミノ酸は必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)です。必須アミノ酸のアミノ酸スコアに関して、以下の式で計算をします。
アミノ酸スコア=食品中のアミノ酸が含まれる量(mg/gタンパク質)/アミノ酸評点パターンの当該アミノ酸量(mg/gタンパク質)×100
アミノ酸評点は以下の通りです(18歳以上の場合)
アミノ酸評点を参考にし、アミノ酸スコアを計算。9つの項目の中で最も少なかった値をアミノ酸スコアとします。つまり、どの項目においても100を超える場合のアミノ酸スコアは100です。
9つの項目で8つのアミノ酸スコアが100でも、1つのみ50であれば、その食品のアミノ酸スコアは50となります。
第1制限アミノ酸とは含有割合が最も少ないアミノ酸
第1制限アミノ酸とは、アミノ酸スコアを計算したときに最も少なくなった値のアミノ酸のことを指します。
なぜアミノ酸スコアの数値だけでなく、第1制限アミノ酸も記載するかというと、タンパク質の合成にはすべてのアミノ酸がバランスよく存在する必要があるからです。一部のアミノ酸が不足してしまっている場合は、最も不足しているアミノ酸によってタンパク質を合成する量が決まってしまいます。
アミノ酸が大切な理由
タンパク質は20種類のアミノ酸から合成された化合物です。そして、タンパク質は他の栄養素から体内で合成することはできません。つまりアミノ酸が不足したら体のタンパク質が不足します。タンパク質はホルモンや酵素などの代謝調節因子やヘモグロビンをはじめとした物質輸送、γ(ガンマ)グロブリンなどの免疫機能に関与しているため、欠かすことができません。
タンパク質が不足すると、代謝調節や免疫機能に影響が出てしまいます。さらに、アミノ酸はアミノ酸自体が神経伝達物質や生理活性物質の前駆体となっているため、アミノ酸が不足していくとさまざまな影響が出ることもあります。つまりアミノ酸こそ体の基礎となるものであり、将来あなたの健康を築いていくものなのです。
アミノ酸スコア100の食品
ここで具体的にアミノ酸スコアが高い(アミノ酸スコア100)食品を見ていきましょう
上記のように、アミノ酸スコア100の食品は多くあります。他にも豚肉や牛肉、大豆などもアミノ酸スコアは100です。タンパク質を多く含む食品は、アミノ酸スコアが高い傾向にあります。
一方で、お米、パンなどはアミノ酸スコアが低い傾向です。朝、パンやお米だけを食べている方は、他の副菜もあわせて摂取できるように心がけていきましょう。
アミノ酸スコアに関するよくある間違い
アミノ酸スコアに関してよくある2つの間違いを説明します。
①アミノ酸スコアが低い食品は食べない方がよい
よくある間違いのひとつとして、アミノ酸スコアが低い食品は食べない方がよいと考える人がいます。しかし、アミノ酸スコアが高い食品と組み合わせれば、アミノ酸スコアが低い食品を食べても問題ありません。アミノ酸スコア100の食品は、基準値よりも多くの必須アミノ酸を含んでいるため、補うことが可能です。
また、白米などは糖質なども多く含んでおり、これらは重要なエネルギー源となります。もちろん、白米だけ、パンだけなどの食事ではアミノ酸摂取量は足りません。他の食材をうまく組み合わせながら、自分の食事を見直していきましょう。白米だけの方は卵や納豆を加えるなどしてみましょう。
②アミノ酸スコアが100であれば気にしなくていい
アミノ酸スコア100の食品があれば、他の食品のことは気にしなくていい。これも多い間違いのひとつです。アミノ酸スコアは、食品中のアミノ酸が含まれている量を化学的に分析し計算されたものとなります。しかし私たちが食事を摂る際には、タンパク質の消化吸収率や加熱、アルカリ処理などによるアミノ酸の有効性が変化することに注意しなければいけません。
つまり、アミノ酸スコア100の食品でも調理方法やそもそもの消化吸収の段階で低下することが起こりうるということです。このようなことも含めると、さまざまな食品をバランスよく摂取していくことが望ましいといえるでしょう。
アミノ酸スコア最新の評価基準DIAAS
消化吸収などを踏まえたアミノ酸スコアで最新の評価基準としてDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)があります。DIAASは、小腸でのアミノ酸消化率を測定することで、体内に吸収されたアミノ酸の量や、アミノ酸・窒素要求量に対するタンパク質がどのくらい寄与するかを正確に測定することができるスコア方法です。しかし人に対しての試験が困難であるため、現在データベースの作成を行っている最中であり、日本の食品標準成分表では従来通りアミノ酸スコアが用いられています。
プロテインスコアとの違い
プロテインスコアとは、アミノ酸スコアよりも昔に提唱されたスコアでアミノ酸スコアと同様にFAOが設定しました。1973年にアミノ酸スコアへと名称が変わり、必須アミノ酸の基準となる値も変化しています。
大豆はプロテインスコアでは56ですが、アミノ酸スコアでは100です。アミノ酸スコアの基準が変化したことで正確に必須アミノ酸の基準値を測定できるようになり、スコアが変化しています。
アミノ酸スコアだけでなくタンパク質の量に注意!
いくら質をよくしても、絶対量が不足してしまうと合成できるタンパク質が不足します。アミノ酸スコアとタンパク質の量に関して解説します。
多くの方は、朝食でタンパク質が不足する傾向にあるので、しっかり量も摂るようにしましょう。
タンパク質の摂取量が不足すると起こりうる病気
タンパク質の摂取不足で起こりうる疾患にフレイル、サルコペニアという病気があります。筋肉量が減少し、転倒などを起こしやすくなる病気です。予防のために、高齢者では少なくとも1.0g/kg体重/日以上のタンパク質の摂取が望ましいと考えられています。また、ヨーロッパやアメリカでは、健康な高齢者にはタンパク質摂取量は1.0-1.5g/kg体重/日が勧められています。
慢性腎臓病の方はタンパク質過剰摂取に要注意
一方で、慢性腎臓病の人はタンパク質の摂取量を制限する必要がある場合もあります。2018年に発表された論文では、0.8g/kg体重/日を基準に低タンパク質食の方が高タンパク質食よりも末期腎不全に進んでしまう方が少なかったと報告されています[1]。
慢性腎臓病の方は、タンパク質を摂る際には、主治医の先生と相談しましょう。
アミノ酸スコアのまとめ、活用アドバイス
今回はアミノ酸スコアについて解説しました。
アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸がどの程度バランスよく含まれているかを示す値であり、高いほどバランスが良いといえます。そしてアミノ酸スコアが100になっている食品は卵や肉類などで、タンパク質が豊富に含まれていると言えます。一方で、精白米やパンなどは低いスコアとなっています。
アミノ酸スコアが高い食品に偏りすぎないようにしたり、アミノ酸スコアが低い食品でも高い食品と組み合わせることが重要です。
アミノ酸スコアを活用するポイントは以下です。
- ①自分の食事がアミノ酸スコアの低い食品ばかりになっていないかチェック
- ②アミノ酸スコアの高い食品やサプリメントと組み合わせて摂取することも可能
- ③外食でもアミノ酸スコアの低い食品が多い場合には積極的にサプリメントの摂取を行う
私たちの体を構成するアミノ酸。ぜひ意識して将来の健康を守っていきましょう。