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BCAAは毎日飲んでも大丈夫?適切な摂取量や摂取タイミングをエビデンス付きで解説

2021年12月12日 - 更新日: 2023年2月11日

記事監修
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西村 殊寛 / YOSHIHIRO NISHIMURA

2008年に神戸大学医学部医学科を卒業。同年、医師免許を取得。2009年より始めたマラソンを医学および統計学より科学的に考察し、独自の理論をもとにSAURUSアドバイザーとして参画。フルマラソンの自己ベストは2時間46分03秒。ハーフ1時間16分50秒。

筋肉の発達を促すために、必須アミノ酸から構成されるBCAAを飲む方も多いかと思います。
しかし、「BCAAを毎日飲んでも大丈夫なのか」疑問を感じている方もいるのではないでしょうか?

結論からお伝えすると、BCAAは過剰摂取に注意すれば毎日飲んでも大丈夫です。
摂取量は2,000mg以上を目安に摂取することで、血中のBCAA濃度が高まり、筋肉の合成や分解抑制に効果が期待できます。
BCAAはほとんど筋肉で代謝されますが、過剰に摂取することで腎臓への負荷増大やカロリーの過剰摂取につながる可能性があるため、過剰摂取に注意が必要です。

この記事では、

について解説します。

BCAAは過剰摂取に注意すれば毎日飲んでも大丈夫

必須アミノ酸であるバリン・ロイシン・イソロイシンから構成されるBCAAは、過剰摂取に注意すれば、毎日飲んでも大丈夫であると考えられます。
なぜなら、摂取したBCAAのほとんどは筋肉で代謝されてしまうからです。
そのため、通常摂取する量であれば、毎日BCAAを摂取しても身体に悪影響は生じにくいでしょう。

過剰摂取となる上限量はわかっていない

アルコールを飲みすぎると解毒作用が間に合わなくなるのと同じように、BCAAでも飲みすぎると体へ負担がかかる可能性があります。
現在のところ、BCAAの過剰摂取となる上限量については、正確にはわかっていません。
体重や個人の耐性によっても上限量は変わってくるため、体調の変化に注意しながらBCAAを摂取しましょう。

BCAAを飲みすぎた場合の副作用やデメリット

BCAAは副作用は生じにくいとされていますが、飲みすぎた場合に以下のような副作用やデメリットが考えられます。

腎臓への負荷増大

BCAAは肝臓と腎臓にて、タンパク質の合成、栄養の貯蔵、アンモニアの解毒に関与しています。
体で分解しきれないほどの量を摂取すると、肝臓や腎臓を酷使してしまい、機能低下を引き起こす可能性があります。

過剰に摂取されて身体に不必要なBCAAは、腎臓を通過して体外へ排出されます。
通常の食事から摂取する量であれば問題ありませんが、サプリメントで過剰に摂取した場合であれば腎臓の機能を超えてしまうかもしれません。
このように腎臓に負荷が増大した状態が続けば、腎機能障害や慢性腎不全などを発症するきっかけとなる可能性があります

カロリーの過剰摂取による体重増加

BCAAにはカロリーがあるため、過剰に摂取すれば体重が増えてしまう可能性があります。
BCAAを構成するバリンやロイシン、イソロイシンなどのアミノ酸は、1gあたり4キロカロリーです。
20gのBCAAを飲んだ場合には、80キロカロリー摂取したことになります。
さらに、商品によっては飲みやすくするために砂糖や塩分を添加していることもあり、BCAA以外のカロリーが増えている可能性もあるでしょう。
そのため、BCAAでも過剰摂取となれば、体重が増えてしまう可能性があります。

参考:BCAAを過剰摂取すれば痩せる?摂りすぎると逆に太る可能性も

BCAAの適切な摂取量

現時点ではBCAAの1日摂取量の目安は、明確には定められていません。
研究報告でもBCAA摂取量はさまざまで、効果が現れる最低量は不明です。

ですが、現状で得られた研究報告からでは、運動前か運動中に2000mg摂取するのが良いと思われます。

またサプリメントで摂取する際は運動前の適度な水分補給も兼ねて、300〜500ml程度の水で飲むのが良いと考えられます。

運動前か運動中に2000mg

BCAAの摂取量については、運動の30分前や運動中に2,000mg以上のBCAAを摂取した方が良いことが研究の結果[14]から示唆されています。

健康な成人男性8名(平均年齢38.5歳)を対象に、BCAAを8,000mg、4,000mg、2,000mg、1,000mg、500mg、0mg配合した飲料500ミリリットルを飲んでもらいました。
その後2時間にわたり、定期的に採血を行い、BCAAの血中濃度がどのように変化するかを調べています。

BCAA摂取者は、いずれも摂取後30分でBCAAの血中濃度がピークになりました。
2,000mg以上のBCAAを含む飲料を摂取した群では、2時間後でも摂取前よりも高い血中濃度が維持されましたが。
しかし1,000mg以下のBCAAを含む飲料を摂取した群では、1時間後には、摂取前の血中濃度に戻っていました。

これを踏まえると、運動時にはより多くのBCAAを体内で必要とするため、運動の30分前や運動中には2,000mg以上のBCAAを摂取した方が良いのではないかと考えられます。

代謝量を調べた研究では体重1kgあたり144mg

BCAAを毎日摂取する場合の1日あたりの適切な摂取量としては、「体重1kgあたり144mg摂取」が最適だと示唆される研究結果が報告されています。[1]
体重1kgあたり144mgというと、体重50kgの人なら7200mgとなります。

厚生労働省基準では体重1kgあたり85mg

厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」で公表している、生命維持と成長のために必要なアミノ酸(BCAA)の必要摂取量は以下のとおりです。

(※数値は男女共通、体重1kgあたりに必要な1日摂取量)

体重50kgの人なら、BCAAの合計必要量は4,250mgと計算できます。

ご自分の体重と合わせて計算し、過剰摂取とならないように上手に摂取していきましょう。

BCAAの適切な摂取タイミングは運動前と運動中

BCAAを摂取したことによる疲労軽減効果や筋肉痛緩和の効果を期待するのであれば、トレーニングの30分前に摂取するのが推奨されます。

筋肉痛とBCAAの摂取タイミング(運動前後)の関係

参考:Effect of BCAA supplement timing on exercise-induced muscle soreness and damage: a pilot placebo-controlled double-blind study

BCAAを運動前と運動後に摂取するかで、筋肉痛は減るのか調べた研究[10]があります。

若い男性が、利き腕ではない方の腕を鍛える運動の前に、BCAAを9.6g摂取しました。
運動後にBCAAを摂取した人に比べて、運動前にBCAAを摂取した人のほうが、運動後の筋肉痛が少なく、筋肉の損傷を示す血中マーカーも低かったという結果が出ています。

この研究結果は、運動前にBCAAを摂取した方が、運動後にBCAAを摂取するよりも筋肉痛が軽減されることが示唆されます。

運動中にBCAA摂取と疲労感の関係

参考:Influence of ingesting a solution of branched-chain amino acids on perceived exertion during exercise

サイクリストを対象とした研究[12]では、持久運動中にBCAAを摂取すると運動強度が低く感じ、精神的な疲労も軽減されるという結果が報告されています。

ここでの運動強度や疲労感は、あくまで自分の感じた主観的なものです。
(Borg scaleという手法で数値化しています。)
実際の身体的なパフォーマンスには、特に変化は見られなかったと報告されています。

運動しない日

BCAAは筋トレや運動しない日に摂取すると、筋肉の回復を促進できるというメリットがあります。
次回の運動筋トレを万全の状態で運動を行うことができれば、必然的に運動の質や強度を向上させることができます。
詳細については、こちらのページにまとめています。

筋トレや運動しない日もBCAAは摂取したほうが良い3つの理由

BCAAの摂取バランス

BCAAの中でもロイシンはタンパク質の代謝を調整する働きもあるため、スポーツをする人にとって欠かせないと言われています。従ってロイシンは他のアミノ酸より多く摂取することが推奨されます。

理想的な割合は、「バリン:ロイシン:イソロイシン=1:2:1」とされています。
この理由は、タンパク質を多く含む魚類や肉類のBCAAの配合割合が、1:2:1となっているからです。

しかし食事からだけでは、3種類をバランス良く摂取するのは難しく、手間や時間がかかってしまいます。
アミノ酸サプリメントにはバランス良く配合されていますので、食事と併用して摂取することにより、カロリーを抑えつつBCAAを適切に摂取することが可能です。

BCAAを飲めば筋肥大するわけではない

BCAAは飲めば飲むほど、筋肉をつくることができるのでしょうか。
残念ながら、BCAAを飲めば飲むほど筋肉がつくられるわけではありません。

BCAAは運動中の筋肉が痩せるのを抑え、BCAAはタンパク質の合成を助ける働きがありますが、筋肉を作るには運動後にプロテインを摂取する方法が適しています。

タンパク質の必要量について

筋肉を作るには、タンパク質の摂取と、適度な運動による負荷がかかっていることが前提となります。
食事の摂食量が多い人は、簡単にタンパク質の必要量を満たすことができますが、食事の摂取量が少ない人は注意しないとタンパク質の不足を招きやすい状態となります。

また、不活発な方や高齢者の方は運動不足やタンパク質不足によって筋肉が減っていきます。
BCAAを飲めば飲むほど筋肉がつくられるわけではないので、適度に運動してタンパク質を摂取し、筋肉を作っていくことが望ましいと言えます。

運動強度とタンパク質の必要量について

激しい運動はタンパク質の分解を促進させることから、運動強度が増えるとタンパク質の必要量も増えます。
また、子どもや大人を対象とした研究においては、適度の運動が成長を促進し、食事性タンパク質の利用を高めることもわかっています。

タンパク質の分解と合成は、体の中で常に行われています。
運動時はタンパク質の合成される量が少なくなり、分解される量が多くなるので、全体でみると分解量が多くなります。
しかし運動が終了すると、タンパク質が合成される分解される量を上回るので、運動で使ったタンパク質の損失を取り戻します。

なお、軽度〜中等度(200〜400kcal/日)の運動の場合には、タンパク質の必要量は増加しないことがわかっています。
タンパク質が足りなくながちなのは強度の高い運動なので、タンパク質の合成を助けるBCAAは高強度トレーニングでおすすめです。

参考文献

[1]The total branched-chain amino acid requirement in young healthy adult men determined by indicator amino acid oxidation by use of L-[1-13C]phenylalanine
[2]「分岐鎖アミノ酸飲料の単回摂取に対する血中分岐鎖アミノ酸応答」
[3]大谷勝.『アミノエビデンス255』.現代書林.2003,199p
[4]日本臨床栄養学会雑誌 p1,27,2005
[5]日本生理入類学会誌. 「分岐鎖アミノ酸(BCAA)含有飲料摂取が漸増運動負荷中の生体に及ぼす影響について」
[6]鈴木良雄. 「スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果」
[7]下村吉治(名古屋工業大学工学研究科).運動による分岐鎖アミノ酸代謝の促進と投与効果
[8]日本理化学薬品株式会社.「必須アミノ酸」
[9]Effect of BCAA supplement timing on exercise-induced muscle soreness and damage: a pilot placebo-controlled double-blind study
[10]Pre- versus post-exercise protein intake has similar effects on muscular adaptations.
[11]Administration of branched-chain amino acids during sustained exercise–effects on performance and on plasma concentration of some amino acids.
[12]Influence of ingesting a solution of branched-chain amino acids on perceived exertion during exercise.
[13]Branched-chain amino acids supplementation enhances exercise capacity and lipid oxidation during endurance exercise after muscle glycogen depletion.
[14]Effective Dose of Branched-chain Amino Acids on Blood Response in Healthy Men

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