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【フルマラソン初心者必見】「補給(補給食)」にまつわるアレコレ(必要性/携帯方法/タイミング等)を一挙にお伝え

2023年2月3日 - 更新日: 2024年8月3日

記事監修
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西村 殊寛 / YOSHIHIRO NISHIMURA

2008年に神戸大学医学部医学科を卒業。同年、医師免許を取得。2009年より始めたマラソンを医学および統計学より科学的に考察し、独自の理論をもとにSAURUSアドバイザーとして参画。フルマラソンの自己ベストは2時間46分03秒。ハーフ1時間16分50秒。

フルマラソンへの参加がいよいよ決まった!でも「補給」に関する知識が全然ない!

本記事では、そんな「フルマラソン初心者」の方に向け、

をお伝えしていきます。

記事内で詳しく解説していきますが、フルマラソン完走のために「補給(補給食)」は欠かせません。補給の成功/失敗は、レースの完走/リタイアを左右するといっても過言ではありません。

しっかりポイントを押さえて、フルマラソン完走に向けた準備を整えていきましょう。

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なぜ補給(補給食)が必要か

フルマラソンは長時間にわたる運動です。マラソン初心者の場合、完走タイムは、速くて4時間、長い人だと6時間以上にも及ぶでしょう。

このことからも、フルマラソン完走のためには「補給が必要」ということはわかるかと思いますが、ここではまず「なぜ補給が必要なのか?」について、「体の仕組み」という観点から押さえてみましょう。

 

【結論】体内に貯蔵できるエネルギー量だけでは足りないから

まずは「なぜ補給(補給食)が必要か?」の答えです。

見出しの通り、「体内に貯蔵できるエネルギー量だけでは、フルマラソンを走り切るのに、エネルギーが足りないから」です。

体内に貯蔵できるエネルギー量はおよそ「2,000kcal」と言われています。

どんなにレース前日にカーボローディング(レースに必要なエネルギーを体内(主に筋肉)に蓄えるための食事法)をしたとしても、どんなにレース当日に朝食をしっかり食べて満腹にしたとしても、体内にあらかじめ溜め込めるエネルギーは「2,000kcal」が限界です。

フルマラソン完走に必要なエネルギー量は人により異なりますが、一つの結論は「2000kcalでは足りない」ということです。そのため、この不足分を「補給(補給食)で補う必要がある」わけです。

 

エネルギー源は「糖質(グリコーゲン)」と「脂質(脂肪)」

運動時に使われるエネルギー源は、主に下記2つです。

人間はこの糖質と脂質を燃焼させることにより、活動するためのエネルギーを生み出しています。

さて、ここで質問です。フルマラソンにおいてはどちらのエネルギー源を使うのが大事だと思いますか?

それぞれの特徴をまずは説明します。

 

「糖質(グリコーゲン)」の特徴:あまり貯蔵できないが、エネルギー効率が高い

糖質は、「グルコース(単糖類/いわゆるブドウ糖))」と、「グリコーゲン(多糖類)」に分けられます。(より細かい分類はありますが、ここではこの2つだけ押さえておけば大丈夫です)

「グルコース」は巷でよく聞くようになった、いわゆる「ブドウ糖」のことです(ブドウ糖80%配合!などと謳っているお菓子をよく見かけますよね)。このグルコース(ブドウ糖)は、血糖として血流中を循環しています。

一方、「グリコーゲン」は体内(主に筋肉と肝臓)に貯蔵されるエネルギーです。グルコースが複数集まったものがグリコーゲンなのですが、いずれにしても「分解が容易」なため、すぐにエネルギー源として使えるのが大きな特徴です。(グリコーゲンの8割は筋肉に貯蔵されます)

「筋肉に貯蔵されている」と聞くと、確かに運動時にすぐにエネルギーとして使えそうなイメージも湧きませんか?

 

「脂質(脂肪)」の特徴:たくさん貯蔵できるが、エネルギー効率が低い

脂質(脂肪)は、糖質に比べて「体内に多く貯蔵できる」というメリットがあります。(蓄えすぎた状態は「肥満」です)

ただし、エネルギーとして利用されるまでには時間が掛かる、という難点があるため、運動時のエネルギー源としてはイマイチです。(通常、脂肪燃焼までには20分以上かかると言われます)

 

※トレーニングによって、脂質(脂肪)を効率よくエネルギー源として使えるようにする(=脂質代謝を高める)ことは可能です。脂質代謝の体になると、もともと多く溜め込まれている脂質(脂肪)を使えることになるので、持久系スポーツに強くなります。脂質代謝への体質改善は一朝一夕でできるものではありませんが、覚えておくと良いでしょう。

 

優先すべきは「糖質の補給」

前項でご説明したそれぞれの特徴を踏まえると、フルマラソンの補給においては、すぐにエネルギーに変えることができる「糖質の補給」が大切なポイントになります。

ここでは、糖質の補給についてもう少し踏み込んで解説します。加えて、「補給食」という文脈においてよく聞く「さまざまな成分(アミノ酸、マグネシウム、カフェイン…等)」についても、各効果について少しご紹介します。

 

なにはともあれ「糖質」が力の源

繰り返しますが、フルマラソンの補給で優先すべきは「糖質の補給」です。

「糖質の補給」をすべてのベースにすることがまずは基本の考え方であり、このあとご紹介する「アミノ酸」や「カフェイン」、「マグネシウム」などは、あくまで「補助」です。運動においては、「糖質が足りなくなれば元も子もない」とまずは肝に銘じてください。

…とはいっても、自分の体を最大限に動かし続けるためには、糖質以外の成分ももちろん大事です。

 

【参考】よく聞く成分とその効果

自分の体を最大限に動かし続けるためには、糖質の働きを補助したり、コンディションを整えるための成分も大切です。

スポーツ店に並ぶジェルなどの補給食も、糖質をベースとしながらも「◯◯配合!」「◯◯入り!」と、商品ごとに特色を打ち出しています。

ここでは代表的な成分の効果を簡単にご紹介しておきます。

 

■ビタミン

糖質や脂質の代謝(=エネルギーをつくり出す働き)を促進させます。つまり、糖質と併せてビタミンも摂取することで、効率良くエネルギーに変換することができます。

ただし、ビタミンは体内で作ることができないため、食事やサプリなど外部から取り込む必要があります。

アミノ酸

筋肉疲労低減の効果があります。ハードな運動を行うと、筋肉(たんぱく質)が分解(破壊/損傷)されますが、アミノ酸には、それら(分解や損傷)を抑える働きがあります。

また、アミノ酸はたんぱく質から摂取できますが、体内に吸収されるまでに時間がかかります。そのため、体内に吸収されやすい状態になったサプリメントを活用するのが、運動時は効果的です。

カフェイン

一般的に耳にする効果は、普段の日常生活における「集中力アップ」や「眠気防止」などですが、スポーツという側面からみても、「持久力」「最大筋力」「筋持久力」など、運動全般におけるパフォーマンスアップが認められています。(レース中でのカフェイン摂取の効果を最大化するために、レース数週間前から「カフェイン抜き」をするランナーもいます。)

留意点としては、「利尿作用」があること。過剰摂取や摂取タイミングには注意しましょう。また、効果が現れるまでに(摂取量や個人差はあれど)30〜60分程度は掛かるので、補給のタイミングも重要です。

ミネラル

ミネラルには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど全部で10数種類ありますが、「運動」という切り口においてまず重要なのは「ナトリウム(塩分)」です。

発汗によりナトリウム(塩分)はどんどん失われますが、塩分補給を疎かにして、いいことは何もありません。夏場のレースなどでは、塩分補給は特に必須です。

マグネシウム

ミネラルの一種ですが、これは運動用のジェルなどでもよく聞く栄養素かと思いますので、単独で取り上げておきます。

マグネシウムは正常な筋肉の収縮に必要不可欠と言われておりますが、ランナー目線で期待される効果としては「足攣り予防」です。マグネシウムは皮膚から吸収できる成分でもあるため、口からの摂取だけではなく、皮膚に塗ることで摂取することもできます(「マグネシウム ローション」などで検索してみてください。)

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補給食の携帯方法

補給食は走っている最中、何かに入れて持ち歩かなければなりません。

ここでは、携帯する際に考えるべきポイントと、具体的な携帯方法をお伝えします。

 

ポイントは「走ってもブレない」こと

補給食の携帯における一番のポイントは「走ってもブレないこと」です。

言い換えると(裏を返すと)「走りに集中できること」ともいえます。

これは容易に想像できるかと思いますが、走りながら身につけているものが上下左右にぐわんぐわんと弾むようにブレてしまっては、走りづらいことこの上ないですよね。

フルマラソンは同じ動作を繰り返すスポーツですので、荷物がブレると42.195kmもの長い間、ひたすらそのブレが繰り返されることになります。これは本当にストレスです。

余計なところに神経を使わなくていいように、「走りに集中できる状況」を作りましょう。

 

おすすめは「ランニングベルト」か「ランニング用ザック」

 

■おすすめ①「ランニングベルト」

アシックス ランニングベルト

[アシックス] ランニングベルト

ストレッチの効いた素材で腰回りに巻き付けます。商品によっては、輪っか状になっており、巻きつけるのではなく、(身につけるときの動作としては)「履いて、腰にはめる」ものもあります。

いずれにしても、体に密着するので物を入れてもブレません。多くの人は補給食だけではなく、スマホなども持ち歩くことになるかと思いますが、スマホ程の重量のものを入れてもブレないものがほとんどです。

ただし、ランニングベルトはサイズ感を誤ると、巻きつけた腰回り もしくは 腹部に圧迫感を感じる人もいるかもしれません。これはこれでストレスになるので、しっかり試着をした上で適切なサイズのものを購入しましょう。

 

■おすすめ②「ランニング用ザック(バックパック)」

アシックス ランニングベスト

[アシックス] テクニカルパック ランニングベスト

ザックには容量がたくさんありますが、マラソン用となると容量は2〜4L程度のものになるでしょう。

2Lサイズなどは、背負っても見た目はほぼ”ぺたんこ”なので、ザックを背負うというよりは「着る」ようなイメージです。そのような見た目の特徴から、このサイズ感のザックは「ランニングベスト」とも呼ばれます。(「ランニングベスト」で検索するといろいろと小容量のものが出てきます)

いずれにせよ、ランニングベルトが「腰回り」に収納するのに比べ、ランニングザック(ランニングベスト)は「ショルダー部分」に基本収納することになるので、補給食を取り出す動きは「無理なく行える」というメリットがあります。(ちなみにザックの背面側にもモノを収納できるので、例えば、スタート時に着用していた防寒着などを入れることができます。)

ランニングベストを着用した際の「見た目」や「着用感」に関しては好みが分かれるかと思いますが、特に違和感がなければ、選択肢としては「あり」だと思います。

一点、せっかくのランニングウェアがザックで隠れてしまうことはお忘れなく。

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レース当日の補給のタイミングとポイント

ここではレース当日の補給について、「レース前」「レース中」「レース後」の3つのタイミングに分けて、ポイントをお伝えします。

 

レース前

まずはしっかりと朝食を摂りましょう。

最終的なレーススタート時の理想は、「お腹の中は空っぽだけれど(体は軽いけれど)、体内が糖質の海で満たされている(エネルギーに満ち溢れている)」ような状態です。

こんな状態でスタートラインに立てたら最高ですね。

ただし、いくら朝食が大事とはいっても、「スタート時に満腹感がある」状態は望ましくありません。これは当然パフォーマンスに影響しますので、朝食を摂るタイミングは大切です。

では、どのタイミングで朝食は摂るべきか。

定石では「レーススタートの3時間前」。どんなに遅くとも「2時間前」には朝食は摂り終えておきましょう。つまり、9時スタートの場合、6〜7時ですね。寝坊はできません。

レース当日の朝は何かとバタバタすると思いますが、「良いレース」をするためには、「スタート前からレースはすでに始まっている」と心得えましょう。

なお、もしスタート1時間前などで小腹が空いているようであれば、ジェルやゼリー、バナナなど、消化が早いものを摂取することはOKです。事前の準備物の中に一つ忍ばせておいてもいいかもしれません。

 

レース中

レース中の基本は「1時間に1回」です。もしくは時間区切りではなく、10km毎など、一定間隔の距離区切りで補給をするのもいいでしょう。

いずれにしても、サブ4狙いなら「3〜4個」、サブ5狙いなら「4〜5個」といった具合です。

レース中の補給の最大のポイントは、「定期的に必ず補給する」ということ。

ありがちなのは、後半になればなるほど疲労が蓄積してきて、補給することすら忘れてしまう(辛くなってしまう)ことです。これは完全に負のスパイラル。

いわゆるハンガーノック(極端な血糖値の低下)という状態ですが、これになると、極度の疲労感からもはや食べる元気すらなくなり、さらにモチベーションも一気に低下します。こうなると、復活するにはかなりの時間を要するので、マラソンレースにおいては「リタイア」と同義です。

「腹が減ってからでは遅い!」と心に留めておいてください。

なお、補給の仕方のポイントですが、「遠くに給水所が見えてきたら」補給するのもひとつおすすめです。

ジェルなどは甘く、どうしてもドロっとしていますので、補給後に給水所の水で口をすぐにスッキリさせるのです。少し極端な言い方をすると、給水所の水で”流し込む”ぐらいのことをしてもいいぐらい、レース中の補給はとても大切です。

 

レース後

本記事を読んでいただいている皆さんは社会人の方も多いのではないでしょうか?

レースの翌日、もしくは翌々日には仕事がある方も多いと思います。

レース後の1週間が生活困難者のようにならないためにも、レース後(レース直後)に何を補給するか、はとても大切です。

すぐにキンキンに冷えたおいしいビールを飲みたいかもしれませんが、可能ならば、ビールの補給はグッと我慢して、まずは「プロテイン」を補給しましょう。酷使して破壊されてしまった筋肉を少しでも補修するのです。できれば運動後「30分以内」の補給がベストです。

とはいってもすぐにコンビニに駆け込めるわけでもないと思いますので、事前に準備しておいてもいいかもしれませんね。プロテインに加え、炭水化物も一緒に補給できれば完璧です。

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まとめ

フルマラソンにおける、補給(補給食)について、

などをご紹介してきました。

これでまた、フルマラソン完走のためのステップを一つ上がりましたね!

ただし、この記事でお伝えした内容は、あくまで「ベーシック」な内容です。

誰しもに当てはまる普遍的な内容ではありますが、携帯方法にしろ、当日の補給タイミングにしろ、(今回は言及しませんでしたが)どのような補給食を摂るかにしろ、最終的には「人それぞれ」というところが、正直あります。

ですので、「試行錯誤」は必要でしょう。

今後、フルマラソンの経験を積んでいく過程で、たくさんのトライ&エラーをすることになると思いますが、その試行錯誤こそが、フルマラソン挑戦の魅力の一つです。

是非いろいろと試しながら、フルマラソンに臨む過程も含めて、すべて楽しんでみてください。

 

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