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クレアチンはマラソンや有酸素運動に効果あり?持久力との関係

2021年12月23日 - 更新日: 2022年2月15日

記事監修
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西村 殊寛 / YOSHIHIRO NISHIMURA

2008年に神戸大学医学部医学科を卒業。同年、医師免許を取得。2009年より始めたマラソンを医学および統計学より科学的に考察し、独自の理論をもとにSAURUSアドバイザーとして参画。フルマラソンの自己ベストは2時間46分03秒。ハーフ1時間16分50秒。

瞬発力を高めることで知られるクレアチンですが、マラソンなどの有酸素運動にも有効なのでしょうか?

結論から言うと、クレアチンを摂取してもマラソンの持久力向上の効果は見込めません。
しかし一部の研究では、クレアチンがラストスパートのスプリント力を向上させる可能性が示唆されています。

本記事では、マラソンとクレアチンの関係やマラソンで必要な栄養素について、論文の結果を踏まえてお伝えします。
マラソンで自己記録更新を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。

クレアチンはマラソンのような有酸素運動に効果はない

クレアチンにはマラソンのような持久系パフォーマンスを向上させる効果は見込めません。
体内でクレアチンが必要になるのは、PCr(クレアチンリン酸)を使用する瞬発系運動のみで、マラソンなどの有酸素運動ではほとんどクレアチンは使用されないからです。

クレアチンとは

クレアチンは、正式名称ではクレアチンリン酸という名称で呼ばれており、筋肉のエネルギーを生み出す物質(ATP)を再合成するために必要な物質です。
クレアチンリン酸が、クレアチンとリン酸に分解される際のエネルギーを利用して、活動エネルギーとなるATPを再合成しています。

クレアチンの体内での役割

特に短距離走などの高強度トレーニングでは瞬間的にATPが必要になるため、クレアチンは欠かせない成分です。
クレアチンを摂取することで、高強度トレーニングの場合はパフォーマンスが向上することが研究の結果からわかっています。

クレアチンは体内のアミノ酸から合成されますが、1日に合成できるクレアチンの量は必要量の半分程度です。
そのため、不足分のクレアチンは、食品やサプリメントから摂取しなければなりません。

参考記事:クレアチンとは?|クレアチンのサプリメント成分を説明

マラソンなどの有酸素運動ではクレアチンは使われない

人体には3つのエネルギー供給系があり、それぞれATP-PCr系、解糖系、有酸素系と呼ばれています。

エネルギー供給系 主なエネルギー源 主なスポーツ種目の例
ATP-PCr系 PCr(クレアチンリン酸) 100m走、砲丸投、走幅跳
解糖系 グルコース 400m走、800m走
有酸素系 炭水化物、脂質、タンパク質 1500m以上の持久走
(マラソンなど)

クレアチンはATP-PCr系で使われるアミノ酸であり、解糖系、有酸素系では使用されません。
マラソンなどの長時間運動では、主に有酸素系がエネルギー供給系として働きます。

そのため、有酸素系のパフォーマンス向上目的でクレアチンを摂取しても、効果はあまり見込めないと言えます。

クレアチンの長期摂取と持久力を調べた実験結果

国立スポーツ科学センターと筑波大学が共同で行った実験では、クレアチンの摂取をしても持久力の向上が見られなかったという結果が出ています。

長期間のクレアチン摂取が持久的能力に及ぼす影響に関する研究

混成競技の選手10名を対象として行われたこの実験では、5名にクレアチンを摂取させ、残り5名に比較のためにグルコースポリマー(プラシーボ群)を摂取させました。

クレアチンと持久力向上の関係

8週間にわたって継続的にクレアチンの摂取とトレーニングを行ったところ、2グループ間で持久力の向上に違いは見られなかったという結果となりました。

このような実験結果からも、クレアチンにはマラソンなどの持久力向上効果は期待できないことがわかります。

クレアチンはラストのスプリント力を向上させる可能性が示唆

しかし一方で、クレアチンはラストスパートのスプリント力を向上させる可能性も示唆されています。

サイクリング競技者を対象に行われた実験では、クレアチンなしのグループ(プラシーボ群)に比べて、クレアチンありのグループの方がラストのスプリント力が高い結果となりました。

実験では、それぞれのグループで120kmのタイムトライアルを行い、10kmごとに1kmと4kmのタイムトライアルを交互に行いました。

クレアチンとサイクリングのTT結果

クレアチンとサイクリングのTT結果

グラフ:Effects of Creatine and Carbohydrate Loading on Cycling Time Trial Performance 図3を改変
※実験ではクレアチンの有無の他に糖質の摂取を2パターン用意

実験結果から、クレアチンありのグループの方が、ラストのトライアルでスプリント力が高いことがわかります。
タイムトライアル全体で見ると差はなかったものの、クレアチンありのグループの方が終盤のスプリント力が高かったことは、これまでの「クレアチンは持久力向上に寄与しない」という認識を否定する結果です。

このような結果が出た理由はまだ研究段階ではありますが、論文の著者は「クレアチン摂取によってATPの再合成が活発になり、序盤〜中盤の糖質の消費を抑えたからではないか」という見解を述べています。

マラソンランナーに必要な糖質とアミノ酸

マラソンのレース後半は、体内の糖質が枯渇してパワーが出にくくなる局面です。
ラストの勝負所で力が発揮できるかどうかは重要なポイントなので、ラストスパートで競り負けてしまう人は、クレアチンを摂取することで結果が変わるかも知れません。

しかし、マラソンにおいてクレアチンよりも優先すべきは、糖質とアミノ酸の摂取です。

有酸素運動では、糖質(グリコーゲン)が主なエネルギー源となります。
体内の糖質はある程度貯蔵することができますが、ランニング中にエネルギーとしてどんどん消費されていきます。
フルマラソンでは30kmを超えると体内の糖質が枯渇し、終盤でペースダウンしやすくなります。

またフルマラソンでは、糖質だけでなくアミノ酸も多く消費されます。
血中のアミノ酸が枯渇すると筋肉をアミノ酸に分解してエネルギーを補おうするため、マラソンでは糖質とアミノ酸の両方を体内に貯蔵しておくことが重要になります。

体内の糖質やアミノ酸を最大限蓄積するためにも

これらをしっかりと行うことで最大限のスタミナを手に入れ、自己ベスト更新を目指しましょう。

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