「アミノ酸が体に必要なのは何となくわかるけど、どう取り入れるといいの？」
「必須アミノ酸って何？」

体に大切なアミノ酸。しかしどのアミノ酸を取り入れることが自分にとって効果的なのでしょうか。

アミノ酸とは、タンパク質を構成している物質。人の体にあるタンパク質を構成するアミノ酸は20種類です。そして、体内で生成できない9つのアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンは、質の良い睡眠や心の安定に関わる成分です。

この記事ではトリプトファンがどんな食品に含まれているのか、人になぜ必要なのかを解説します。

トリプトファンとは

トリプトファンとは必須アミノ酸のひとつです。体内で作れないため、食事から摂る必要があります。

トリプトファンを摂取すると肝臓で分解され、脳内へ運ばれてセロトニンに変換されます。
セロトニンとは、ドーパミンやアドレナリンを制御する役割を持つ、神経伝達物質です。[1]

ドーパミンは喜びや快楽、アドレナリンは恐怖や驚きなどを感じる脳内の神経伝達物質。セロトニンは、ドーパミンやアドレナリンの情報をコントロールし、精神を安定させる役割を果たしています。

セロトニンが低下すると、ドーパミンやアドレナリンのコントロールが不安定になりバランスを崩してしまいます。すると、攻撃性が高まる、不安やうつになりやすくなるなどの症状が現れることも。

トリプトファンの効果

脳内で神経伝達物質と変化するトリプトファン。どのような効果があるのでしょうか？

快眠の効果

セロトニンは寝つきを良くしたり、興奮を鎮めて精神を安定させたりする効果があります。
そして夜になると、体内時計の調整をおこなうメラトニンに変化するのです。[2]

トリプトファンが不足すると、セロトニンが十分に生成されません。快眠効果を得るために、トリプトファンは重要です。

精神安定の効果

脳内に取り込まれたトリプトファンは、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンに変化します。

テレビや雑誌で、目にしたり耳にしたりしたことがあるのではないでしょうか。セロトニンは心と身体を安定させ、幸せを感じやすくなる働きがあります。セロトニンがきちんと分泌されていると、ポジティブになり若々しくいられるようです。

トリプトファンの注意点

トリプトファンはドーパミンやアドレナリンなど神経伝達物質をコントロールすることから、うつ病に効果があるといわれています。しかし副作用が見られる場合があり、注意が必要です。

抗うつ薬として使用される副産物

トリプトファンの科学的な副産物として5-HTP（5-ヒドロキトリプトファン）があります。
日本では医薬品とされていますが、食品としての販売は認められていません。

5-HTP（5-ヒドロキトリプトファン）とトリプトファンがプラセボ（偽薬）よりも成人のうつ病や気分変調症に使用できる抗うつ薬だと発表された論文があり、数人の研究者がその論文を検証しています。[3]

結果は、どれも決定的なエビデンスとしては不十分なものばかりでした。めまい、悪心、下痢などの副作用が見られたからです。

安全で効果的な抗うつ薬は他に存在するため、5-HTPやトリプトファンの有用性はまだ限定的だと検証結果は締めくくられています。

食品に5-HTPが含まれていたことも

平成28年に厚生労働省と千葉県が、インターネットで販売されていた健康食品について注意喚起をおこないました。[4] 医薬品である5-HTPが含まれていたからです。食欲を抑える効果があるという広告のもとに販売されてた健康食品でした。

現在、トリプトファンは厚生労働省の「指定添加物」です。[5] 食品そのものでは販売できませんが、医薬品的な効果を主張しなければ、食品衛生法に沿って食品などに使用することができます。よって健康食品などに入っていても問題はありません。

しかし、胸やけ、胃の痛み、悪心、肺や心臓・肝臓の炎症など、副作用らしき症状がみられた場合は、ただちに病院を受診するよう告知されています。

トリプトファンが含まれる食品は？

食事から摂取する必要があるトリプトファン。では、どのような食品に多く含まれているのでしょうか？

文部科学省の食品成分データをご紹介します。[6]

食品からトリプトファンを摂取しても過剰摂取になる可能性はありません。[7]　摂取したトリプトファン全てが、そのまま体内に吸収されるわけではないからです。消化吸収率や有効性も加味する必要があります。バランス良く食事をすれば、食品から過剰摂取する心配はないでしょう。

トリプトファンを取り入れて健やかな毎日にしよう

トリプトファンについて解説しました。要点をまとめます。

• トリプトファンは快眠効果や精神の安定の効果がある
• 厚生労働省の指定添加物で、食品衛生法に沿って食品などに使用されている
• トリプトファンを食品から摂取しても過剰摂取になる危険は低い

トリプトファンは体内で生成することができない必須アミノ酸です。毎日の食事でバランスよく取り入れましょう。

また、トリプトファンは、必須アミノ酸（EAA）に含まれる成分です。
他の必須アミノ酸については、以下の記事を参考にしてください。
EAAとは？筋トレやダイエットへの効果や、飲むタイミングなどをまとめて解説

アミノ酸全体についてはこちら
アミノ酸とは？タンパク質との違いや種類・効果を簡単に解説

参考文献

[1]厚生労働省．e-ヘルスネット．［情報提供］．「セロトニン」．西大輔．東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野准教授
[2]厚生労働省．e-ヘルスネット．［情報提供］．「メラトニン」
[3]Shaw ,KA.Turner ,J.Del, Mar, C．Cochrane．うつ病に対するトリプトファンおよび5-ヒドロキシトリプトファン．2002.1
[4]千葉県報道発表資料．「医薬品を含有する健康食品の発見について」．平成28年度版，2016．
[5]厚生労働省．「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質（原材料）の食品衛生法上の取扱い」
[6]文部科学省．「食品成分データベース」．食品成分ランキング．トリプトファン（参照.2021.09.19)
[7]厚生労働省．「1-2たんぱく質．5-1.不可欠アミノ酸の推定平均必要量」．p99．（参照2021.09.19）

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