
EAA(必須アミノ酸)
eaa
必須アミノ酸「フェニルアラニン」とは?
2021年9月23日 - 更新日: 2022年5月13日
体に必要な必須アミノ酸のひとつであるフェニルアラニン。どのような成分で、どのような役割をはたしているのでしょうか。
フェニルアラニンの効果を最大限に活用するため、わかりやすく解説します。
フェニルアラニンとは?
フェニルアラニンとは、タンパク質に含まれている必須アミノ酸のひとつです。
必須アミノ酸とは、体内で作ることができない9種類のアミノ酸であり、食品から摂取する必要があります。筋肉や骨、血液の合成に欠かせない成分です。この章では、フェニルアラニンが体の中でどう変化していくのかを解説します。
フェニルアラニンからチロシンへ
フェニルアラニンは体内に取り込まれると、チロシンに変換されます。チロシンとは、細胞内でタンパク質を合成するときに必要なアミノ酸のひとつです。
チロシンに変換されたのち、脳内へ誘導され興奮性の神経伝達物質であるドーパミンに変換されます。[1]
チロシンからドーパミンに変換
ドーパミンとは神経伝達物質のひとつで、アドレナリンやノルアドレナリンの前駆体でもあります。
脳内報酬系と呼ばれる、欲求が満たされた時に気持ちよさや幸福感を引き起こす、脳内システムの中心的な役割を担っています。アルコールを摂取したとき、気分が高揚するのはドーパミンの作用によるものです。[2]
アドレナリンとノルアドレナリンは交感神経に関与
アドレナリンとはエピネフリンとも呼ばれ、副腎皮質から放出されるホルモンのことです。また交感神経を刺激して心臓や血管の収縮力を高める作用もあります。
ノルアドレナリンとはノルエピネフリンとも呼ばれ、激しい感情や強い肉体作業でストレスを感じたとき、交感神経の情報伝達物質として放出される物質のことです。ノルアドレナリンが放出されると交感神経が高まり、血圧や心拍数が上がるため体は戦闘態勢になります。[3]
フェニルアラニンの効果
必須アミノ酸であるフェニルアラニンの主な効果を2つ紹介します。
痛みを鎮める効果
フェニルアラニンは、D型フェニルアラニン(DPA)という鎮痛効果がある物質です。主に、鎮静剤として使用されています。慢性的な顔面痛、後頚部痛、五十肩、腰下肢痛、膝痛を持つ患者に、フェニルアラニンを投与したら痛みが軽くなったという報告がありました。[4]
脳機能への効果
脳内でドーパミンに変換されるフェニルアラニン。ドーパミンはやる気を起こす働きがあり、学習に深く関わることが知られています。
2020年にに行われた研究では、一過性の運動により脳の認知機能が上がり、ドーパミンの分泌が高まったという報告がされています。運動後に認知機能が上がる際、ドーパミンが関係しているようです。認知機能とドーパミンの関係については、さらなる研究が続けられています。[5]
フェニルアラニンの副作用
フェニルアラニンの主な副作用は、以下の2つです。
トリプトファンとの相互性
フェニルアラニンは血液脳関門を通って脳内に取り込まれます。血液の中から脳内へタンパク質、脂質などが取り込まれたり排出されたりする時の仕組みを血液脳関門といいます。物質は通常、体内で臓器と血液の間を自由に行き来することができますが、脳内への移行は厳密に制限されているのです。
トリプトファンは、過剰な興奮や衝動を抑える役割を持つ、セロトニンに変換される必須アミノ酸です。フェニルアラニンとトリプトファンは同じ血液脳関門を通るため、フェニルアラニンを過剰に摂取するとトリプトファンの吸収が抑えられる可能性があります。
反対に、トリプトファンを過剰に摂取するとフェニルアラニンの吸収が抑えられるかもしれません。つまり、この2つの必須アミノ酸はバランス良く摂ることが大切なのです。[1]
血圧・心拍数・血糖値の上昇
アドレナリンやドーパミンに変換されたフェニルアラニンは、血圧や心拍数を上昇させます。同時に肝臓に蓄えられているグリコーゲンから糖を産生して血糖値も上げます。過剰摂取すると、高血圧や心臓病、糖尿病へのリスクが高まりますので注意が必要です。
フェニルアラニンは食事でも摂取されているため、高血圧、心臓疾患、糖尿病をお持ちの方は、サプリメントなどを取り入れる前に医師に相談しましょう。
フェニルアラニンが含まれている食品
フェニルアラニンが多く含まれている代表的な食品を紹介します。[7]
また、フェニルアラニンは人工甘味料である指定添加物のアスパルテームの原料です。清涼飲料水、ガム、飴などに使われており、他にも顆粒やシロップとして販売されています。[8]フェニルアラニンが食品添加物として使われていると、健康被害が気になるかもしれません。
日本で使用できる食品添加物は、厚生労働大臣が指定したものだけです。厚生労働省は、実際に食品添加物をどれくらい摂取しているかを調査しています。最近の調査結果では、実際の摂取量は「一日摂取許容量」(ADI)を大きく下回っているため、健康への悪影響はないと報告されています。[9]
フェニルアラニンを摂取して安定した心と体を手に入れよう
必須アミノ酸のひとつである、フェニルアラニンについて解説しました。体内では作れないアミノ酸であるため食事から摂取が必要です。
サプリメントでも摂取することがは可能ですが、摂取量が多くなると高血圧や心疾患、糖尿病に影響を及ぼすため、摂取する前に医師に相談しましょう。
フェニルアラニンは、自分の体内では作ることができない必須アミノ酸です。上手に取り入れて、健康な体を作りましょう。
また、フェニルアラニンは、必須アミノ酸(EAA)に含まれる成分です。
他の必須アミノ酸については、以下の記事を参考にしてください。
EAAとは?筋トレやダイエットへの効果や、飲むタイミングなどをまとめて解説
参考文献
[1]美作大学.公開講座『これからの「食」と「子ども」と「福祉」を考える』
第3回『脳のはたらきと食べ物』21-22p(参照2021-09-11)
[2]厚生労働省.生活習慣病予防のための健康情報サイト.e-ヘルスネット[情報提供].ドパミン
[3]西大輔.東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野准教授.厚生労働省.生活習慣病予防のための健康情報サイト.e-ヘルスネット[情報提供].ノルアドレナリン/ノルエピネフリン
[4]河内明,北出利勝,豊田住江,亀井順二,兵頭正義,細谷秀吉.J-STAGE.「D-フェニルアラニン術前投与症例に対する鍼治療」.『全日本鍼灸学会雑誌』.1982,Vol32,No2,p.47-51
[5]安藤創一.電気通信大学大学院情報理工学研究科.J-STAGE.「体力化学シンポジウム24」.『運動による脳内ドーパミンと神経活動の変化:認知パフォーマンスへの効果』.2020,Vol69,No1,p.107
[一般社団法人日本救急医学会.「医学用語解説集」.『血液脳関門』(参照2021.09.11)
[7]文部科学省.「食品成分ランキング」.『アミノ酸フェニルアラニン』
[8]公益社団法人.日本食品科学研究財団.「指定添加物リスト」『指定添加物リスト(規則別表第1)』.令和3年1月15日改正まで記載.登録品目数:472品目(参照2021-09-11)
[9]厚生労働省.「よくある質問(消費者向け)」.『Q5.私たちはどのくらい食品添加物を食べているのですか?』.2021年2月3日更新.(参照2021.09.11)